なぜ猫は横に寝かせる?犬と猫の保定の違いを獣医師が解説

猫の行動・生態

はじめに

動物病院で犬は立ったまま、猫は横向きに寝かせて処置されることが多いのを見たことはありませんか?この違いは、犬と猫の「体の作り」「性格の違い」「安全確保」の3つの理由から生まれています。

猫を「横向き」にする3つの理由

  1. 逃げるプロを無力化する体の構造

猫の体は驚くほど柔軟で、狭い隙間を通り抜けたり、保定者の手の中から「くねくね」と逃げたりするのが得意です。横向きに寝かせ、四肢を優しく伸ばして固定することで、この「逃げる技術」を封じます。具体的には:

· 前足で引っかく動きを防止
· 後ろ足で蹴る力を制限
· 体をくねらせて脱出するのを防ぐ

  1. 猫が安心する「包まれ方」の違い

猫は掴まれるのが苦手です。特に首の後ろ(「スキューティング」といって母猫が子猫を運ぶ時に使う部位でさえも)、成猫では不快に感じる子が多いです。そこで重要になるのが「面」での保定です。

NGな保定:指先で「点」をつかむ
→ 猫は嫌がり、暴れる原因に。

良い保定:手のひらで「面」を包み込む
→ 横向きにした体全体を、手のひらや腕、体幹などの広い面で支えることで、拘束感ではなく安定感を与えます。

  1. 処置の安全・確実さ

多くの診察や処置(採血、超音波検査など)には、体が安定した横向きの姿勢が最適です。暴れた場合の落下リスクも低くなります。

犬が「立ったまま」が多い理由

  1. 構造的に安定した姿勢

犬は四足で立つ、または座ることが自然で最も安定した姿勢です。大きな体を無理に横向きにすると、抵抗による関節への負担が心配されます。

  1. 犬特有の安心の仕方

犬は信頼する飼い主や保定者に体を密着させられることで、逆に安心する習性があります。立位や座位で体側を密着させ、優しく抱きかかえる「ハグ」のような保定は、犬のストレスを軽減します。


犬と猫の保定の違いを一覧で比較

比較ポイント 犬の保定 猫の保定
基本姿勢 立位・座位が中心 横臥位(横向き)が中心
目的 信頼関係の中で動きを制限する 刺激を最小限に、素早く安全に処置する
キーワード 安心、密着、協調 迅速、静寂、最小刺激
保定のコツ 体を密着させ、声をかけながら 広い「面」で包み、必要以上に目を合わせない
重要な理由 関節負担の軽減、犬の習性を利用 猫の柔軟性・警戒心への対応


例外と自宅でできる工夫

基本は上記の通りですが、処置内容によって姿勢は変わります。例えば犬でも超音波検査の時は横向きにしますし、猫でも座らせたまま耳の処置をすることもあります。

自宅でできる、病院でのストレスを減らすための工夫を2つ紹介します。

  1. 猫用:タオルに包まれる練習
    診療でよく使われる「バスタオル包み」に事前に慣らしておくのは非常に有効です。リビングでリラックスしている時に、優しくタオルをかけて少し包んでみることから始めましょう。
  2. 犬用:体側を触られる練習
    診察台のようなやや高い場所に乗せ(不安定さを再現)、体の側面を優しく抱きかかえられることに慣らしておくと、病院での保定がスムーズになります。

いずれの場合も、「力づくで押さえ込まず、動物と人の安全を確保する」 ことが最優先です。適切な保定は、動物の恐怖心を軽減し、次回以降の診療をずっと楽にしてくれるのです。

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